1926年に録音したフルトヴェングラーの運命を録音する機会があり、許可いただけたので公開します。どうやって再生させるか遺跡発掘的な復刻作業でしたが何とかまとまりました。

録音について

当時の独Gramophoneの録音は米Brunswick社によるライトレイ方式の録音を採用していたようで、ラッパの内側に置いた振動膜の振動→光→電気信号→カッティングという、変わった録音方式だそうです。弱音時に擦れますが、割ときれいに録れています。

参考にした資料
・https://grammophon-platten.de/e107_plugins/forum/forum_viewtopic.php?512.0
・フルトヴェングラーセンター WFHC-021/2

マトリクス番号より、
174 bm, 175 bm, 179 bmは1926/10/16の録音
214 bm, 215 bm, 216 bm, 217 bm, 218 bmは1926/10/30の録音
330 ½ bmは1927年の録音とされます。
オットー・クレンペラーの1926年録音とされているドビュッシーのノクターンが319 bm, 320 bm, 331 bm, 332 bm、このあたりが特定できれば録音年月日もわかるかもしれません。

第三楽章~第四楽章が含まれる330 ½ bmではダイナミックレンジの確保に苦労していたようで、楽器配置に苦労している痕跡があります。録音エンジニアはDレンジ確保、弱音時の擦れ、ピークオーバーによるクリップで頭を抱えていたかもしれません。この面でのフルトヴェングラーは、はっきり音を出すためかパッパッパと音出しをしています。エンジニアと演奏家はピリピリモードだったかも(^^;

とはいえ演奏は若々しいベートーヴェン象が綺麗になぞられていて、素晴らしいの一言。特に第二楽章の厚い響きはドイツ的としか言いようがないものです。
録音に難があっても、デッドなルームトーンからは楽器の細かいニュアンスがよく伝わり、音楽を楽しむための情報はそろっています!

昔この演奏を聴いた時に復刻音が良くなかったので、「こりゃいかん、勿体ない」とすぐに再生を止め、いつか78rpm盤で聞くまで楽しみにすることにしてました。
思った通り素晴らしい演奏で大満足です。

録音データ

Artists Wilhelm Furtwangler
Berlin Philharmonic Orchestra
Comporser Ludwig van Beethoven
Title Symphony No.5, Op.67
Label GRAMMOPHONE [69855/69859]
Matrix 174 bm, 175 bm, 
216 bm, 217 bm, 218 bm, 
179 bm, 330 ½ bm, 
214 bm, 215 bm
Recording 1926/1927

Download



* 32bit floatのWavPackとmega.nzでの配信
* 音源提供者の方から3-4楽章をくっつけてほしいとオーダーがあったので、トラックをマージしてあります。

復刻について

復刻環境

AD/DA RME ADI-2 Pro
Player Technics 1200 mk4
Cartridge Denon DL-102SD
PreAmp(Phono) Marantz #7
DAW Magix Samplitude Pro X3
Recording Format PCM 32bit float / 384kHz

盤の溝の幅はアコースティック録音時代と同じようです。Ortofon CG 65 Di MKIIのカートリッジでは第二楽章で針が滑ってしまい、DENON DL-102SDでようやくトレースできました。

各面ごとに回転数ムラがあるためピッチを先に決める必要がありました。
自分で調べたところ、ベルリンフィルのピッチが1930年のポリドール録音では、A=435~438Hzであったので今回はA=438Hzで作成しました。

盤面ごとのピッチ/回転数表

*内外周の回転数差も補正してあるので、表は大まかな平均値になります。

各面ごとに内外周の回転数ムラ修正を行い、A=440Hzに統一してから、全体をA=438Hzへ再度調整しています。(検出ツールがA=440Hzベースなのでひと手間増えてます)
174 bm, 215 bm以外はすべて内外周に回転数ムラがあるハードな復刻でした(^^;

そのほかに、ノイズリダクションとEQ処置をしてあります。
収録時にマランツ7のPhono入力を通しており、いつものようにフラットな状態からのEQ掛けでなく、過不足を調整する補正的なEQ処理になります。
各バランスをメモしたものです。

  • 一楽章(174 bm, 175 bm):若干軽めの音
  • 二楽章(216 bm, 217 bm, 218 bm):ゴロあり、バランス良
  • 三楽章前半(179 bm):一楽章に近い、冒頭音が小さく擦れる
  • 三楽章後半と四楽章前半(330 ½ bm):中域にピークあり
  • 第四楽章中盤と後半(214 bm, 215 bm):バランス良、前半よりインテンポ、二楽章と同じく低音がよく出てます

各パート毎の調整では各面ごとの音量差をこまごまと調整、第二楽章はゴロがあるため低音を少しカット、盤面の内外周の高域特性統一、その他統一感出すためのイコライジング調整をしてます。

盤面のつなぎは、重複分を重ね、三楽章の抜け小節はそのままで再生してあります。

まぁとにかくピッチが一番大変でした。A=438Hzでやってみたものの、これでいいのか確信はありません。1926年のベルリンフィルのピッチをご存知の方が見えましたらご連絡お待ちしてます。