戦中マグネトフォン録音のレコード

戦中マグネトフォン録音のレコードと音源の由来を調べてみました。
戦後録音であれば録音日や場所が特定されていますが、戦中録音はわからないものが多いそうです。音源の出所とか経緯を中心にまとめています。

プリ・メロディア

ロシアにある(あった)マグネトフォンテープの由来について。
テープの大本は、ベルリン占領後にソ連側がイギリス軍と空港(?)との交換で獲得し、当時ベルリンの統治を任されていたソ連軍のジューコフ将軍の指示でドイツからロシアに運ばれた、という流れがあったようです。
イギリス軍もアメリカ軍も自国にマグネトフォンを持ち帰って研究しているので、ソ連側も軍事目的で解析・研究する目的であり、音楽を聴くためではないはず(^^;

試験的な運用を兼ねてなのか、終戦直後からロシアでのライブ録音が多数残されています。貴重な演奏が高音質で聞けて嬉しい反面、元あった音源は上書きしているらしいので、失われた音源も多そうです。

ガスト56のレコードは結構生々しく入ってます。ただ、カッティング時のレベルが低かったり(33Д 07910)、音割れや機材の不調によるハムがある盤(33Д 09868)がありました。33Д 09868のコリオラン序曲は特にひどいですが、再発盤では改善されているとか。
マスターかそれに近い音源がソースなのか、うまく再生できると、とても良いです。

メロディアの再発盤は評判が悪いですが、ガスト56-73まで同じ音の盤もあるので、聞いて見てみないと一概に悪いと言えないと思います。
マトリクス番号が初版盤と一緒ならほとんど同じ音でなります。(例:Д 05800/1-1といった書式で盤面に刻印されています)

ガスト56のレコードをまとめてみました(ガスト61時代の戦中マグネトフォン録音新譜はない?68からはある模様)
左から、カタログNo、曲と演奏家、リリース年です。

Д 05800
Д 05801
Beethoven – Sympony No.5
Wilhelm Furtwangler,  BPO (1943)
1959
Д 6023
Д 6024
Schumann – Kreisleriana
Walter Gieseking (1942~3?)
1960
Д 06429
Д 06430
Brahms – Sympony No.3
Hans Knappertsbusch,  BPO (1944)
1960
Д 64455
Д 64456
Д 64457
Richard Strauss – Sinfonia Domestica
Richard Strauss,  VPO (1944)
1960
Д 07907
Д 07908
Д 07909
Д 07910
Hydon – Die Schopfung
Clemens Krauss, VPO他 (1944)
1960
33Д 09083
33Д 09084
Beethoven – Sympony No.4
Wilhelm Furtwangler,  BPO (1943)
1961
33Д 09867
33Д 09868
Brahms – Sympony No.4, Beethoven – Coriolan Overture
Wilhelm Furtwangler,  BPO (1943)
1961
33Д 09883
33Д 09884
Brahms – Piano Concerto No.2
Wilhelm Furtwangler,  Edwin Fischer, BPO (1943)
1961
33Д 010033
33Д 010034
Schubert – Symphony No.9
Wilhelm Furtwangler, BPO (1942)
1961
33Д 010165
33Д 010166
Beethoven – Piano sonata No.14,No.27
Walter Gieseking (1944,1943)
1961
33Д 010851
33Д 010852
33Д 010853
33Д 010854
Beethoven – Symphony No.9,
Brahms –  Haydn Variations
Wilhelm Furtwangler, BPO他 (1942,1943)
1961

VOX系

ベルリンにあった戦中マグネトフォン録音のテープは終戦直後まとめてロシアに持っていかれ、その後1949-1950年頃に東ドイツへ一部返還をされました。

VOXや系列のURANIA RECORDSからリリースされていた音源はこの返還テープがベースになっているらしく、リリースするにあたって1分当たり$4を支払う契約を東ドイツの放送局と結んだとありました。

VOXのカタログナンバーを見るとマグネトフォンソースのレコードを連番で出してます。

VOX
[PL 7210]
Beethoven – Sympony No.4
Wilhelm Furtwangler, BPO (1943)
1951
VOX
[PL 7220]
Richard Strauss – Sinfonia Domestica
Richard Strauss,  VPO (1944)
1951
VOX‎
[PL 7230]
Franck – Symphony
Wilhelm Furtwangler, VPO (1945)
1951

フルトヴェングラーファンに有名なURANIA RECORDSはVOXのプロデューサーが立ち上げたブランドだそうです。

VOX系のマグネトフォン録音のレコードは、東ドイツの放送局から正式なライセンス契約を結んだ音源でしたが、アーティストに許可は取らなかったため裁判沙汰になります。

フルトヴェングラーはパリでウラニアのエロイカの販売権を買ったThalia Disques社に対して、販売差し止めと賠償金請求の裁判を起こし、1953年12月に判決が出ています。
フルトヴェングラーが「これは私の演奏ではない」と主張したからか、パリの裁判所は名前を消してリリースすればいいよ、という判決を下しました。
この裁判の後、フランスのThalia Disques社が名前を伏せた状態でレコードの販売を開始しています。私の手元の仏盤はフルトヴェングラーの名前がありませんでした。

最初の裁判の判決はフランス国内でしか適用されないので、アメリカではそのままレコードが売られ続けてました。
フルトヴェングラーは代理人を通し、1954年3月に改めてニューヨークでURANIA RECORDSを相手に裁判を起こしています。
(その年にフルトヴェングラーが亡くなったため裁判はうやむや?)

同時期にワルター・ギーゼキングも勝手に放送局に録音した音源を販売されたとして賠償金10万ドルを請求する裁判をおこしています。
こちらはレーベルが5万ドル支払う判決を勝ち取りました。

ちょうど裁判の時期にフルトヴェングラーのEMI録音のエロイカを、RCAがライセンスを取ってアメリカでの販売の準備をしていたり、ギーゼキングもColumbia録音でウラニア盤と被る曲をリリースしていたので、権利関係が複雑な背景もあったようです。
URANIA RECORDS側はEMIの契約と同じ10%のロイヤリティを支払うとフルトヴェングラーに提案しており(フルトヴェングラーは応じなかった)、最初の確認取らずにリリースした件以外はレーベルとしてまじめに対応している印象です。

作曲で2枚分リリースされているプフィッツナーは1949年に亡くなっていました。
この時期、ドイツ人作曲家のライセンスはどうなっていたのか(^^;

URANIA RECORDSの戦中録音を分かった範囲でまとめてみます。

URANIA RECORDS
[URLP 7050 ]
Pfitzner – Das Katchen Von Heilbronn Overture
Hans Pfitzner, VPO (1945)
1952
URANIA RECORDS‎
[URLP 7056 ]
Pfitzner – Symphony No.1
Hans Schmidt-Isserstedt, German Opera House Orchestra (1942)
1952
URANIA RECORDS‎
[URLP 7095 ]
Beethoven – Sympony No.3
Wilhelm Furtwangler,  VPO (1944)
1953
URANIA RECORDS‎
[URLP 7106 ]
Schumann – Davidsbundlertanz
Walter Gieseking (1942~3?)
1953
URANIA RECORDS‎
[URLP 7107 ]
Bach – English Suite No. 6,
Schumann –  Kreisleriana
Walter Gieseking (1945?,1942~3?)
1953

(URLP 7015,7028,7035,7096 7091の音源が戦中録音か調査中)

VOXはその後、1960年代末にTurnaboutというブランドを立ち上げ、そのなかで戦中録音もリリースしていました。

Royale、Allegro、Mercuryなどもまとまったら追記していきます
Discocorpもいろんな音源出してるので把握しておきたい

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